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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第9章 穂向け
 それに耐えられず、神依は自分を抱きしめるように右肩をぎゅ、と掴んだ。
(だから──だから私も、酷いこと……言われてたんだ……)
 ……人の姿でないものに蹂躙される恐怖や気味悪さ、羞恥心……そして敢えなく壊されていく理性の脆さは、実際に禍津霊に襲われた神依だからこそ正しく、生々しく理解できる、話だった。
 幸いにも、神依はその前に引き揚げられたが……もしも誰も手を伸ばしてくれなかったら、まさしくあの“悪意ある噂”のようになっていたかもしれない。
 「……」
寒いわけでもないのに肌が粟立ち、今更に猿彦が言ったことの真実の重みがのしかかってきた。
 「洞主様……」
「……うむ。言葉にするのも恐ろしきことじゃが……しかし、これもまた契りじゃ。贄として差し出された巫女は帰らず、もはや神とも言えぬ化け物のものとなる。その化け物とても、巫女を求むるは食らう以上に自らの魂を慰める神婚の意味合いの方が強かったであろう。
そしてこの大蛇は年ごとに娘を求めたと言うから、……可哀想じゃが、その間の巫女はいっそ食われた方が楽ほどの仕打ちを受けておったやもしれぬ。……たとえ、巫女にそれを拒む自我が無くともな」
「……」
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