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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第9章 穂向け
 洞主はそれを当然のように話しているが──“契りを結ぶ”のは、心を決めた男神と時を経て、もっと自然に行われるものだと神依は思っていたのだ。
 そして、原初の女神もそれを示していたような気がする。
(なのにまさか……まさか、こんな話になるなんて)
 困惑する神依に、洞主は小さな子に言い聞かせるように説く。
「今の豊葦原にはさほど巨きな神は生まれぬが──まだ神と人とが共に在った時代には、そなたが興した斎水別神のように天津神にも御し難い神が多々在られた」
「龍……の神様、が?」
「この国元は水と山の国故な──しかしそうした龍や大蛇の姿をした水の神は、時に土地も命も、全てを等しく無慈悲に呑み込んでしまう。先の御霊祭しかり……故に他の神は力で、人は信仰と技とでそれを治めようと長い間対峙してきた。けれどもそれもままならぬもの……人々はやがてその荒ぶる神に、娘を差し出すようになった」
「あ……」
 洞主がなぜそんな話をするのかは分からなかったが、神依はその言葉にいつか鼠軼と話したことを思い出した。確か……
「生贄に、女の子を求める大蛇がいたと聞いたことがあります。あの子龍が石を食べるのが心配で……私の家の、屋敷神様にお聞きしたんですけど」
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