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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第9章 穂向け
 そう言ってころころと笑う洞主だったが、その言葉が進むに連れ神依は何を考えたのか真っ赤な顔をして縮こまり、代わりに禊はどんどん無表情になっていく。
(あーあ……)
そしてそれを何でもないような面持ちで眺める童だったが、そのちぐはぐなやりとりは呆れを通り越していっそ滑稽だった。
(確かに、並の巫女ならいいだろうけど……姉ちゃんはなあ)
 改めて語るべくもなく、主はその奇異な漂着と相まって巫女として持っていて当然の感覚が欠如していた。
 風呂も最初は一人で入りたがったし、皆で食卓を囲むのもそうだし、自分の立場が分かっていないのか少しも偉ぶらない。禊や童がして当然のことにもいちいち礼を言ってくれるし、その価値を高めてくれるし──だからこそ地位を持たない者達からも好く思われている。
 それは確かに淡島の巫女の中では異質かもしれない。だがしかし、そこには何より“心”がある。
 だから今回も、見ず知らずの神との無意味な契りを嫌がることは安易に想像がついたし、童は童として、禊の前で朱印云々の話をされることは少し不快なものだった。
 禊が何も語らない分、禊という存在の真実と心中を知る童はいっそう哀れな気持ちになる。
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