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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第9章 穂向け
突然の事態に、神依は混線する思考をなんとか解きほぐし言葉を探す。日嗣は、そんな話は全くしていなかった。
 「あの……日嗣様は、どうしてそんなことを?」
「……うむ。おそらくは“依”という字を嫌ったのであろうな。これは、善きも悪きも引き寄せ、身に留める言葉じゃ。……儀式も控えておうたし、穢れが依り付くのを厭うたのであろ」
「はあ……」
そう言われれば、そうなのだろうか。しかし神依はいまいち腑に落ちず、曖昧に頷く。
 ただ……変えろと言われて変えるのも、変な感じがした。
 ……神依。
 みより。
今目の前にいる洞主や日嗣自身はもちろん、猿彦、禊や童とたくさんの大切な人が呼んでくれた大事な名前。
 「お母さん」がくれた、大切な名前。だから──
 「……すみません。私は、今のままがいいです」
「……で、あろうな。正直に申せば、変えようと思うて変えられるものでもなし……御令孫の仰せとはいえ、難儀なことを申し遣ったと苦慮しておった。しかし、そなた本人の意思ともあれば、御令孫もご納得下さるであろ」
「はい」
 今度会ったら聞いてみよう、と思いながら神依は少しぬるくなったお茶をいただく。なんとなく、いつも禊が出してくれるものと似た風味のような気がした。
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