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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第9章 穂向け
「……」
「……」
二人はそれを見送り、その姿が見えなくなってからもしばらくその場に在った。まだふわふわと夢心地で、空気の上にいるような気分だった。
「……」
やがて退屈になった子龍がキュウ、と細く鳴く。神依はそれを見、指先で喉を撫でて……もう少し一緒にいてね、と心の中で呟いた。逃げたくはない。でもまだ弱い自分には何か、すがるものが欲しかった。
「……日嗣様。神楽殿で話したこと……、覚えてますか。日嗣様が、秘密にしたこと」
「……」
静かに口を開けば、わずかな沈黙の間に一筋の風が流れる。
日嗣は神依に向き直り、しかしすぐにまた雲海の方へと視線を移してしまった。
何を言われるか怖くて、冷水を浴びさせられたように一気に心が萎縮する。まさか、知られたのだろうか。それを責められるのだろうか。否、それならまだいい。それより厭なのは、もっともっと別にある。
しかしそれすら言えずにただ頷けば、神依もまたじっと雲海を眺めたまま続けた。
「私……本当はどうしたらいいのか分からなくて。日嗣様は、今のままでいいって言ってくれたけど……でもそれじゃあ、私は変わらないし、日嗣様もずっと変わらない……ひとりぼっちのまま、二人でいるだけな気が、してたんです」
「……」
二人はそれを見送り、その姿が見えなくなってからもしばらくその場に在った。まだふわふわと夢心地で、空気の上にいるような気分だった。
「……」
やがて退屈になった子龍がキュウ、と細く鳴く。神依はそれを見、指先で喉を撫でて……もう少し一緒にいてね、と心の中で呟いた。逃げたくはない。でもまだ弱い自分には何か、すがるものが欲しかった。
「……日嗣様。神楽殿で話したこと……、覚えてますか。日嗣様が、秘密にしたこと」
「……」
静かに口を開けば、わずかな沈黙の間に一筋の風が流れる。
日嗣は神依に向き直り、しかしすぐにまた雲海の方へと視線を移してしまった。
何を言われるか怖くて、冷水を浴びさせられたように一気に心が萎縮する。まさか、知られたのだろうか。それを責められるのだろうか。否、それならまだいい。それより厭なのは、もっともっと別にある。
しかしそれすら言えずにただ頷けば、神依もまたじっと雲海を眺めたまま続けた。
「私……本当はどうしたらいいのか分からなくて。日嗣様は、今のままでいいって言ってくれたけど……でもそれじゃあ、私は変わらないし、日嗣様もずっと変わらない……ひとりぼっちのまま、二人でいるだけな気が、してたんです」

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