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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第9章 穂向け
 いつか時がきたら。この大きな手に、優しく開けてもらいたかった。
 「……」
龍はそんな二人を背に、気の赴くまま伸びやかに雲海を……沫のように儚く美しい世界を巡ると、やがて見慣れた、小さな家のある小島の脇に流れ着いた。



【3】

 庭に降り立った日嗣は、どこか危なっかしい神依を子供を抱くようにして龍の背から地に下ろす。
 神依は再び地に足を着けると、斎水別神と向き合って未だ興奮冷めやらぬように笑った。
「ありがとう、すっごく楽しかった! まさかこんな日が来るなんて思わなかった──今度また……は、駄目だよね」
『機会があれば』
「ふふ、なら夜更かし頑張らなきゃ。朝は……また、花を捧げに参ります」
『待っている。……天つ日嗣の御座の神にもまた……その神たる身を潤す、甘やかな慈雨のあらんことを』
最後だけ巫女と神として言葉を交わしその頬を撫でれば、龍は和やかに目を細める。そして、同じ神として……日嗣にはその魂が求めるものを願い一度首を垂れると、緩やかに雲海へと身を翻していった。もはや二人の邪魔はするまいと、その玻璃のような時間が必要なことを、龍はなんとなく理解していた。
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