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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第9章 穂向け
 時折島と島の間を通り過ぎ、神依が行ったことの無い場所を見せてくれることもあった。村がいくつもあった。広大な棚田や畑があった。神依の知らない人達が生きる、知らない場所。
 見たことのある場所もあった。白い鳥居が連と列なる道、猿彦が釣竿を垂らしていた岩の台、奥社の奥の奥……地の底に続く、長い長い回廊。空からみたらそのどれもがちっぽけで、けれど胸の奥には熱くて堪らないものが込み上げてきた。
 (ああ──)
帰ってきてよかった、と神依は心の奥深くで思う。初めて思った。
 辛いこともあった。でも優しい人達もたくさんいた。この世界に来て初めて触れてくれた人が、初めて声を掛けてくれた人が、初めて側にいてくれた人達が、優しい人で本当に幸いだった。
 こんなにも綺麗で、こんなにも広く、こんなにも暗く、こんなにも温かみのある場所ならば……帰ってきてよかった。
 この世界は、剥き出しの心そのものだった。
 だからずっと、長く長く描かれてきた──。
 「信じられない──夢みたい!」
「ならば明日は一緒に寝坊だ」
「ふふ、そしたら今度は禊のお説教ですよ。日嗣様のお祖母様より長いかも」
「それは……勘弁だな」
神依は子龍を抱き、日嗣はそんな神依の肩を抱く。
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