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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第9章 穂向け
 神依は未だ背に張り付く子龍を見せようと横を向く。すると子龍は慌てて龍とは反対側の腕に巻き付き、おっかなびっくり顔を出した。
 龍はじっとそれを見つめ、やがて口を開く。
『このチ龍はいずこで?』
「八衢で、迷子になっていたみたいなの……。あ……もしかして、同じ群れの子とか……?」
『いえ。しかし……このチ龍には、何か“うろ”のようなものを感じる』
「──うろ?」
応えたのは日嗣だった。何か良くないものならば、神依の──もっと言うならば、淡島に置いて置くわけにもいかない。
 しかし龍は穏やかに、その首を横に揺らした。
『害を及ぼすものでは無いかと。魂自体が生まれて日が浅く、現世よりも常世に近いか……或いは根の国に至り生まれ変わるまで、満たされぬ境遇の魂だったのか。いずれにせよ、どうかそのうろが満つる程の深き慈愛を』
「そう……分かった。この子はもう大事な家族なの。……さっきは怒ってごめんね」
「……」
神依が指先でくすぐってやれば、子龍は嬉しそうな声で鳴きもう何でもないように龍の大きな鼻先に乗り移った。日嗣もそれを見て、何の含みも無かったかとひとまずは安心する。
 しかし次に龍が発した言葉に、二人は今度こそ耳を疑った。
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