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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第9章 穂向け
 そしてだからこそ、混ざり合った感情から何を拾い上げていいのか神依にはまだ分からない。
「……」
そんな風に、互いに手のぬくもりだけを頼りにやって来たのは、進貢の広場だった。
 「な……」
「……」
しかしそれを一目見た神依は唖然として、入口から一歩も歩けなくなってしまう。一体ここで、何が起きたのか──広場とはいえそこは、僅かばかりの陸地を残し網状に川が流れる、水の森へと変貌を遂げていた。
 石畳の残骸と土、水晶を沈めた川には白い花を付け萌ゆる水草。爛漫に咲き誇っていた花や生い茂っていた木々も今はその水から成り……太い根や枝々が複雑に絡まって、水筋を繋ぐ橋となっていた。
 森にたゆたうのは、心地好い水の音と若い緑の香りだけ。
 そしてぐるりと広場を見渡した神依は、その一角が明らかに変貌していることに気付く。
 それは自分が舞うために立った場所。蛟を祭るはずの池のあった、その場所だった。
「神依」
「は……はい」
日嗣は平らかな根を選びながらそちらへ神依を導く。その根を渡り、浅い川を歩き。葉を潜り抜け視界が一気に開けると、大きさを増し、大いに様変わりしたあの池が目の前に広がった。
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