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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第9章 穂向け
 その一言に神依がくすりと笑えば、日嗣も安心したように肩の力を抜いた。
 「……まあ、彦の言葉を借りるならここで会ったのも何かの縁だ。歩けるなら……一緒に会いに行かないか。お前が何を興したか、見せてやる」
「──っ……はい!」
そうして、日嗣は一瞬迷ったように手を差し出し……神依もまた、喜びと胸の痛みと共に、その手を取った。
 日嗣の過去を知る前……神楽殿で拒んだものを、神依は取ってしまった。知った今、手にしてしまった。


【2】

 日嗣は神依の歩幅に合わせ、また深夜ということもあってかゆったりと歩んでくれた。
 月と星の光が今の二人を導いてくれるもの。足元の水晶も、そんな小さな光の一つだった。
 (あの時みたい……)
洞主に手を引かれ、地の底に降った時のことを思い出す。そして神依はその時と同じように何も語らず、また日嗣も口を閉ざしたままだった。
 日嗣が何故語らないのかは分からなかったが……傍らで何を喋ったらいいのか、神依にはまだ分からなかった。
 例えば日嗣自身が秘めた過去。それを彼が知らないところで視てしまったことを、本人に告げるべきなのか告げないべきなのか……考えれば考えるほどに分からなくなる。
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