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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第9章 穂向け
「こら、鯉が可哀想でしょ。そんなにバシャバシャしたら禊や童も起きちゃう──あっ」
が、その少しきつい口調に子龍は拗ねたように鳴き──神依の脇をすり抜けると、一直線に門の方へと駆け出してしまった。
「待って、そっちは駄目──」
もう夜も遅い。こんな時間に迷子にでもなってしまったら、とても一人では探しおおせない。神依は慌ててその後を追い、竹林の小路を駆け抜けた。竹に絡まっていた水晶が水に還り始め、星明かりに、それより小さな雫が煌めき宙を舞っていた。
「……っ」
しかし、飛び石の渡り口まで来たところで意図せずその足は止まってしまう。
目の前に広がったのは、目眩を伴うような──上も下も、闇と金銀の砂子に覆われた、星野の異世界。
その物言わぬ美しさに、こくりと喉が蠢いた。あまりに過ぎた美しさは恐ろしいのだと、本能が悟った。朝早く起きるために夜早く眠り、今まで見ることの叶わなかった淡島はそのくらいいつもと違う。
(だからお日様とお月様の神様がいるんだ……)
神依はそんなことを思い、おそるおそる飛び石に足を掛ける。あの水晶のように、弾けて消えてしまうのではないかとさえ思えて、通い慣れたはずの道が今は少し怖かった。
が、その少しきつい口調に子龍は拗ねたように鳴き──神依の脇をすり抜けると、一直線に門の方へと駆け出してしまった。
「待って、そっちは駄目──」
もう夜も遅い。こんな時間に迷子にでもなってしまったら、とても一人では探しおおせない。神依は慌ててその後を追い、竹林の小路を駆け抜けた。竹に絡まっていた水晶が水に還り始め、星明かりに、それより小さな雫が煌めき宙を舞っていた。
「……っ」
しかし、飛び石の渡り口まで来たところで意図せずその足は止まってしまう。
目の前に広がったのは、目眩を伴うような──上も下も、闇と金銀の砂子に覆われた、星野の異世界。
その物言わぬ美しさに、こくりと喉が蠢いた。あまりに過ぎた美しさは恐ろしいのだと、本能が悟った。朝早く起きるために夜早く眠り、今まで見ることの叶わなかった淡島はそのくらいいつもと違う。
(だからお日様とお月様の神様がいるんだ……)
神依はそんなことを思い、おそるおそる飛び石に足を掛ける。あの水晶のように、弾けて消えてしまうのではないかとさえ思えて、通い慣れたはずの道が今は少し怖かった。

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