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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第9章 穂向け
 その日嗣の言葉に、月読は弧月の如くニィ、と笑う。
「気になるか?」
「……何を」
「私は替えの利く玩具に興味は無い。──良いか、玩具にも種類がある。手で弄んで壊しても構わぬ遊具と、触れることすらままならず、手入れはすれども常は目で見て楽しむ骨董だ」
「……」
「多少珍かであっても、浅き巫女など私に取っては前者に過ぎぬ。それでもなおかの巫女を私の玩具にさせたいのならば、早う手籠めにして召し上げよ。万年かけて、じわりじわりと寝取ってやろう。あとは屑篭に捨ておいてやる故、好きにせよ──それならば真、楽しめる」
「……あなたと言う人は」
「お前に私を質す資格など無かろう?」
嘲りを含んだ冷たい笑みと、暗に語られた罪に日嗣が黙せば、月読はまた興味が失せたようにふらりと歩みを進める。
「芯を手折られた女ほど安く旨いものは無いというに……降らぬとは。やはりお前はいつまでも、酒にはならぬ青き穂よ」
「……」
その背と声を、今度は視線だけで追えば……先の陛(きざはし)の下に、日嗣も見知った一柱の神の姿があった。
 猿彦ら国津神の長、伍名だった。
 伍名は日嗣と目が合うと、いかにも人好きのしそうな柔和な笑みを浮かべ一度頭を垂れる。
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