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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第23章 天地開闢
ふ、と視界に入り込んできた白い手と女の声に、やんわりとそれを押し留められる。日嗣が隣に目を遣れば、いつの間にか女が膝をついていた。花の香りがする女。
 「貴女は……」
『……』
女は柔く笑んで、頷く。そしてその手には、小さな骨の龍が抱かれていた。……もう動かない。
「あ──」
思わず声を上げそうになれば、やはり女は静かにそれを制止する。視線と、空いた右手の人差し指だけで示される静寂。怒鳴られたわけでもないのに逆らえず、叱られたわけでもないのに気を折られて、日嗣は女に場所を譲るようわずかに身を退いた。
 女は優しく笑み、謝辞を述べるように頷き神依を覗きこむ。
 「……」
……それは自らの血脈に繋がる、原初の女神。
 今傍らにあって見つめても、その横顔ははっきりとした像を持たず──あの時と同じように、やはりほんの少しの仕草の違いであらゆる女の姿に見えた。ゆらゆらとうつろうその姿は、自分の感覚がおかしいのかと思考をそわだたせる。実像がない。
 それはこの神が、もう命そのものであるからなのだろうか。
 ……でなければ、そもそも神とはそういうものであったのかもしれなかった。
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