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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第22章 天孫降臨
 答えが出ぬまま日嗣は再び神依を見上げ、それから再び剣を泥に向け言葉を紡ぐ。
「……すまない。あの娘は私が私の世界に連れ帰る。だがいつか、豊葦原の大地で……お前達の淡く短き人生が実を結ぶよう、私も神として祈ろう──」
言葉と共に目を閉じれば、今自らが足を着く大地に、何かが流れているのが感じられた。
 ひとところに留まらず、円を描くようにこの根底の国を巡っている。雨の波紋のように幾重にも重なり合い、途切れることはないもの。春先の淡雪のような光を水に溶かした、ふわふわともさらさらともいえない不思議なもの。
 それらは日嗣が命じればゆるゆると伸び、そしてその光の色のまま地上に現れ、泥と水の大地を満たしていく。自らを司るにそれ以上の者はない、天の神の威を得たそれらは見事に実り、さざめきを増していく。
 氾濫の後、肥沃をもたらした土壌に広がるのは──黄金の稲穂の光。
 天を動かすのでない。世界を変えるのでもない。ただ地から天に光が伸びるその光景は、天地開闢のときに似ていた。
 「……日嗣……様……。……やっぱり、……」
そしてそれを眺めていた神依の紅い瞳は、箔を混ぜて作られたとんぼ玉のように美しい光を宿したまま、閉ざされる。
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