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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第22章 天孫降臨
それが一瞬だったのか、長い時を要したのか──その感覚も失せていて、やがて気が付いた時には、日嗣は大地に立っていた。
(……これは)
風の去った方を見上げれば長雨が明けた瞬間の、今にも虹が出そうな雰囲気の空──或いはまさか、夜明けだったのか──そんなきらきらとした空気が満ちていて、一本の鉄の大蛇が落ちてくる泥から自分を庇うようにその身を宙に横たえていた。鋼の黒と、空の白々とした光がくっきりと世界を分けている。
(そうだ──子龍──)
あの白珊瑚のような龍はどうなったのか。
目に染みる眩しさを瞬きで癒しながら、日嗣は泥に埋もれた足元をあちこち見遣るがあの小さな骨は見付からない。泥から抜いた剣の先にも何の変化もなく、自分が何を貫いたのかも分からないままだった。
「……」
鈴はまだ鳴り止まない。
泥の大地より、遥か上にあるその石の台(うてな)を仰ぎ見れば、鉄の大蛇がゆっくりと蠢いた。
重い、金属が擦れる音が響く。大蛇達は日嗣の視界を開くように左右に割れ、遥か古の昔からそうであったように、無き頭を垂れ忠臣の佇まいを見せる。
それによって日嗣と神依の間に、まっすぐな道ができた。見上げた先にはもう姉妹神の姿はなかったけれど、今はその立ち位置を逆さにして、天の神と根底の神々に愛された巫女は在った。
光に照り、真白に染まった巫女服。その袖が瀞(とろ)のように揺れ、鈴が最後の流水の音を奏でる。
だが……神依はそこで終わりにはしなかった。
(……これは)
風の去った方を見上げれば長雨が明けた瞬間の、今にも虹が出そうな雰囲気の空──或いはまさか、夜明けだったのか──そんなきらきらとした空気が満ちていて、一本の鉄の大蛇が落ちてくる泥から自分を庇うようにその身を宙に横たえていた。鋼の黒と、空の白々とした光がくっきりと世界を分けている。
(そうだ──子龍──)
あの白珊瑚のような龍はどうなったのか。
目に染みる眩しさを瞬きで癒しながら、日嗣は泥に埋もれた足元をあちこち見遣るがあの小さな骨は見付からない。泥から抜いた剣の先にも何の変化もなく、自分が何を貫いたのかも分からないままだった。
「……」
鈴はまだ鳴り止まない。
泥の大地より、遥か上にあるその石の台(うてな)を仰ぎ見れば、鉄の大蛇がゆっくりと蠢いた。
重い、金属が擦れる音が響く。大蛇達は日嗣の視界を開くように左右に割れ、遥か古の昔からそうであったように、無き頭を垂れ忠臣の佇まいを見せる。
それによって日嗣と神依の間に、まっすぐな道ができた。見上げた先にはもう姉妹神の姿はなかったけれど、今はその立ち位置を逆さにして、天の神と根底の神々に愛された巫女は在った。
光に照り、真白に染まった巫女服。その袖が瀞(とろ)のように揺れ、鈴が最後の流水の音を奏でる。
だが……神依はそこで終わりにはしなかった。

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