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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第22章 天孫降臨
 何を語っているのか理解する間もなく、呑まれると思った。しかしその覆い被さってくる闇の中を、白々とした長細いものが滑る。骨の子龍。それはある一点を目掛けて泳ぐと自らその身を翻し、ぐにゃりと空間を巻き込んで眼下で一気に花開いた。
 変化(へんげ)。
 骨を開いて、石粒を塗料のようにばらまいて。
 小さな龍が自らを依りに顕したのは、水色の傘だった。
 (あれか……!)
直感的に、日嗣はそこが要なのだと思う。この泥の大蛇を作り上げた、何か。
 考える必要すらなかった。気付いたときには日嗣は既に宙を蹴っており、自らを鼓舞するような雄叫びと共に、今度は逆に自分から闇の中に飛び込んでいった。その頭上に漆黒の波が迫る。しかしそれが覆い被さるより、日嗣の方が早かった。日嗣は刃を下に向け剣を垂直に持ち直すと、飛び込んだ勢いのまま傘ごとその一点を貫く。
 ──泥の大蛇が哭いたのは、その直後だった。あの巨大な口はもう無い。代わりに闇のそこここが引き千切られたかのように裂け、声を上げた。
 それは金属を掻いたような、あまりに痛々しい絶叫だった。びりびりと体の芯まで届く。長く尾を引く声は天を撫で、集まっていた禍津霊達を泥塊にしてぼたぼたと地に落としていく。
 成し遂げたのか──それを考える隙もなく、精神すら裂かれそうな断末魔の叫びから逃げるよう、日嗣は強く目をつむる。
 その暗闇の中で自らを包む風と水が荒れ狂い、駆け抜けていくのを体で感じ、突き立てた剣をよすがにその衝撃にひたすら耐えた。
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