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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第22章 天孫降臨
 そしてそれは、日嗣も一度は目にしたことがある幽玄の輝きだった。
 たとえば剣。刀。一流の匠が鍛え上げるその刃。新たに現れたその巨大な骨は、まさしくその玄(くろ)と白とを纏っていた。
 けれどそれが日嗣を傷付けることはない。むしろ泥の大蛇から護るように日嗣を軸に円を成し、青海波(せいがいは)の文様を描き大蛇を屠(ほふ)っていく。
 それが誰の意思に従い動いているかは、もはや明白だった。
 「神依──」
巫女の鈴は鳴り止まない。そしてその音に呼応するように、手の中の剣が鼓動していることに気付いた。
 かつて、素戔鳴が“八俣の大蛇”の尾から顕した──剣。
 その剣は従来使用されていた銅より遥かにしなやかで強靭な、新たな土を用いた精製物であった。
 その特殊な物質は人の世にあっても威を誇り、その歴史や権力の流れすら変えた。
 ──故にこそ天照に奉られた、神宝。
 そして今ここに至っては──水と、火と、厳と。
 一見交わらない三種の威が一つとなり生み出したものは、その剣と素を同じくする──鉄だった。
 つまり神依が新たに見出だし興した鉄の大蛇は、かつて素戔鳴が退治した大蛇そのもの──豊葦原の、かの大地より染み出した砂鉄を孕む巨大な川の神であり、またその腹を赤く爛れさせ精錬を表し、末は錆にて川を朱に染める──この世に鉄という新たな物質を産み出した龍神、“八俣の大蛇”だったのだ。
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