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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第22章 天孫降臨
 生まれながらに母に悲しい思いをさせた。
 (あなたのことも、もう分からない)
 玉衣も、櫛名田も。母としてあってくれた全ての女を裏切って、自分はここまで男を求めてやってきた。
 だから先に日嗣がそうしたように、真っ正面から大蛇と向き合い、互いの見えない意思をぶつけあう。今こそその、胎を破って。
 (神依──)
そして日嗣もまた、その姿に気付く。二柱の女神を背に、火灯りを纏うその巫女の瞳は黒ではなく、既に赤の色に染まっていた。巫女の足元には鏡の欠片と剣の鞘が左右等しく鎮座して、不可解な色の光を放っている。押し寄せる蟲はそこで造作もなく失せて、決して彼女に近付けはしない。
 「──ッ」
神依に怒り荒ぶる大蛇に、日嗣はもう一度剣を振るいその舌を裂く。大蛇は突然浴びせられた斬撃に怯み日嗣を宙に放り出すと、悶え、更に怒ってその鎌首を持ち上げた。
 辺りには暗雲たちこめ、雨は雷(いかずち)に姿を変えて、根底の国のあらゆる場所でその天と地とを結び付ける。
 その災禍に、いなくなった娘を想う父母の屋敷で。その娘が望んだ思い出の幻の村で。光の虫を生む蓮の沼で。虚ろな廃墟の街で。古からの信奉者の住み処で。
 けれど神を宿した巫女は、何を臆すこともなくその声で、神の言葉を紡ぐ。
 「──吾(あ)を討ちし、荒(すさ)ぶ神の子子孫孫。天にぞおわす、日輪月輪の神も照覧あれ。吾こそ真に祭らるるべき、三種(みくさ)の力を宿す神なり」
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