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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第22章 天孫降臨
 素戔鳴ら男神の先達がそうであったように、この凶事を乗り越えさえすれば、自らの勇と威を誇れる。背に何かを庇える、その喜びも知れた。それが好いた者であるならば、無限の力を発揮できるような気がしていた。
 ……だがそれは、思い込みや慣れからの油断と紙一重のものだった。
 三本目。
 そして四本目の頭が落ちた時、再び泥の大地がどうと震える。

***

 振動は宙にあった日嗣にも地にあった神依にも伝わり、遠くにあっても二人は同じように驚愕の表情をして目を見開いた。
 世界は大きく縦に揺れ、そのあまりの上下の振り幅に、泥の海はごぼごぼと音を立てて石筍(せきじゅん)のように隆起する。それはまるで、更なる地底から禍々しい何かが喚び興され、この場所に這い出しているさまにも見えた。
 神依と日嗣、二人の、一瞬の希望はたったそれだけで霧散する。
 残された大蛇の頭はそれに惑うことなく高らかに吼え、と同時に泥中からは、先程落としたはずの四本が再びその鎌首をもたげた。
 嘘、と神依が小さく喉を振るわす。
 そしてその眼差しの先には、蘇った大蛇を前に呆然と動きを停める日嗣の後ろ姿があった。
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