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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第22章 天孫降臨
呼吸することを忘れていたように大きく息を吐(つ)き、どうかこのまま、良いようにと手の中の小さな太陽を握りしめる。
 そうすれば自分は自分のまま、元の生活に戻ることができる。望んだまま、愛する家族が待つ家へ。
 ──石と鋼でできた世界、そこにあるあらゆるものが、人によって造られた無魂の世界──あの廃墟の街ではなく、空と海でできた世界、そこにあるあらゆるものが、神とも人ともつかぬ生きた世界へ。
 山場は越えた。
 だからあとはただ粛々と役目を終え、それが叶ったら安堵と達成感を味わうだけ。まるで舞台を終える役者のような、そんな緩んだ感覚がじわ、と体の中に染みた。
 或いはそれは、日嗣の中にも滲み出していた感情かもしれなかった。
 勘、というものがある。経験によって感覚の中に培える、根拠はないけれど信じるに値するもの。
 かつて豊葦原を治めるに、将として在った日嗣の、闘争に関するそれは長らく眠りについていた。けれども黄泉に降り、命が脅かされる度に少しずつ少しずつ揺り起こされていく。
 それが幸であったか不幸であったかは分からないが、少なくともそこに強い意思が加われば、何かを達成するに思わぬ力が働くことも今の日嗣は理解していた。
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