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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第22章 天孫降臨
あの蛟(ミズチ)を龍神として治めたように、女神のひび割れた大地を癒したように。
 元は一つのものであったのだから、何かができる可能性は充分にある。とにかくあらゆる力を尽くし、この大蛇の形をした禍事(まがごと)を抜かなければならない。
 ──それは形は違えども、時を経て行われる二度の大蛇退治だった。
 八塩折(やしおおり)という、幾度も醸して造られる、大蛇すら酔わせる強酒だけが見当たらないのが悔やまれる。巫女が神のために吟醸し、捧げる酒。そして神が坐す桟敷(さじき)を組み、樽、盃を並べてその訪れを待つ──。あの素戔鳴さえ妻たる女神にそれを求め、大蛇を酔わせ眠らせた末その勝利を得た。
 ふと、もしも神依がなしてくれるなら、それはどれだけ旨い酒だろうと思う。あいにく日嗣は酒には酔えぬ質(たち)だったが、それにだけは気持ちよく酔えそうな気がした。或いは、女と共に過ごせる時間そのものに酔うのか。どちらにしても、夢心地のまま落とせれば、大蛇の眠りも深かろうに──今はもはや、その猶予すら無いのが口惜しい。
 (……事ここに至って、神頼みならぬ神依頼りか。大見得を切ってきた割りには情けない。……いや、俺はもうそういう男か)
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