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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第22章 天孫降臨
自嘲か、それとも今はまだ得ぬ幸福への期待か──自然と緩みそうになる頬に、日嗣は意図的にそれを堪える。
この窮地に、惚れた女の前では余裕ぶって。この瞬間にさえその女のことばかり考えて。──それとも、男は皆そういうものなのだろうか。
頭の中では二つばかり、何事か呑気な声が答えてくれたような気がしたが、それに頷いてやる暇もない。
横に構えた剣は上下に大きく開けた大蛇の顎の間を抜け、その大蛇は退く間もなく勢いのまま刃に突っ込み、顎の付け根から頭(かしら)に向かって自らを裂いた。
魚を卸すように剥がれた肉塊からは、人とも獣とも、悲鳴とも呻きとも取れぬ声が重なり出で、そのままぼたぼたと眼下の汚泥へ落下していく。斬り口からはその泥と血を混ぜたような体液が流れ、また宙に飛散した。
一方顎を裂かれた大蛇の首は、その痛みと怒りに凄まじい声を上げ、狂乱するように身をくねらせてそのまま大地に突っ伏した。巨体が揺れ、同じ数ほどありそうな尾までが荒びる。体にまで伝わる、地鳴りと振動。
しかし、まだ死んではいない。人が傷口に手を当て、撫でて癒そうとするように──大蛇は何度も何度も頭を地面に擦り付けて、もがきにもがく。
この窮地に、惚れた女の前では余裕ぶって。この瞬間にさえその女のことばかり考えて。──それとも、男は皆そういうものなのだろうか。
頭の中では二つばかり、何事か呑気な声が答えてくれたような気がしたが、それに頷いてやる暇もない。
横に構えた剣は上下に大きく開けた大蛇の顎の間を抜け、その大蛇は退く間もなく勢いのまま刃に突っ込み、顎の付け根から頭(かしら)に向かって自らを裂いた。
魚を卸すように剥がれた肉塊からは、人とも獣とも、悲鳴とも呻きとも取れぬ声が重なり出で、そのままぼたぼたと眼下の汚泥へ落下していく。斬り口からはその泥と血を混ぜたような体液が流れ、また宙に飛散した。
一方顎を裂かれた大蛇の首は、その痛みと怒りに凄まじい声を上げ、狂乱するように身をくねらせてそのまま大地に突っ伏した。巨体が揺れ、同じ数ほどありそうな尾までが荒びる。体にまで伝わる、地鳴りと振動。
しかし、まだ死んではいない。人が傷口に手を当て、撫でて癒そうとするように──大蛇は何度も何度も頭を地面に擦り付けて、もがきにもがく。

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