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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第22章 天孫降臨
【4】
同時に大蛇が一斉に吼える。
頭を数える暇も無く、中ほどにあった一本の首が獲物に食らいつくように大口を開けて日嗣の眼前に迫った。何の前触れも感傷も無い。純然たる殺意と憎悪だけが、日嗣を噛み砕こうと牙を剥く。
頭だけでも己の身丈ほどあるその大蛇の口腔はどす黒く、刃のような牙が屹立(きつりつ)して在った。先端が枝分かれした、蛇特有の舌もある。
日嗣がそれをいなせば大蛇は二度、三度と別の頭を突き出し、その凄まじい空気の動きに腐臭までもが波のように満ち干きを繰り返す。またそれを追うように、辺りに立ち込める水気を帯びた薄い雲が稲光を走らせた。
(──斬れるのか)
日嗣は宙で体勢を整えると、柄を握り直し向かってきた一本の頭に対し平行に刃を差し出す。
神依の言葉を信じるとして、この大蛇から出でた剣でその身を断てるのか、日嗣には判らなかった。当たり前だが誰も試したことがない。
ただ斬れたなら、少なくとも大蛇の方は討てる気がした。かつて素戔鳴がしてみせたように、あるだけの頭を落としてしまえばいい。或いは、今日まで神器として崇められてきたこの剣ならば──殺めるのではない、この穢れた肉体を祓い、荒ぶる魂を鎮め、今度は逆に剣の中に治めることもできるかもしれない。
同時に大蛇が一斉に吼える。
頭を数える暇も無く、中ほどにあった一本の首が獲物に食らいつくように大口を開けて日嗣の眼前に迫った。何の前触れも感傷も無い。純然たる殺意と憎悪だけが、日嗣を噛み砕こうと牙を剥く。
頭だけでも己の身丈ほどあるその大蛇の口腔はどす黒く、刃のような牙が屹立(きつりつ)して在った。先端が枝分かれした、蛇特有の舌もある。
日嗣がそれをいなせば大蛇は二度、三度と別の頭を突き出し、その凄まじい空気の動きに腐臭までもが波のように満ち干きを繰り返す。またそれを追うように、辺りに立ち込める水気を帯びた薄い雲が稲光を走らせた。
(──斬れるのか)
日嗣は宙で体勢を整えると、柄を握り直し向かってきた一本の頭に対し平行に刃を差し出す。
神依の言葉を信じるとして、この大蛇から出でた剣でその身を断てるのか、日嗣には判らなかった。当たり前だが誰も試したことがない。
ただ斬れたなら、少なくとも大蛇の方は討てる気がした。かつて素戔鳴がしてみせたように、あるだけの頭を落としてしまえばいい。或いは、今日まで神器として崇められてきたこの剣ならば──殺めるのではない、この穢れた肉体を祓い、荒ぶる魂を鎮め、今度は逆に剣の中に治めることもできるかもしれない。

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