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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第22章 天孫降臨
神依は両手に握らされた、黄金色の小さな塊に目を落とす。一瞬、今にも爆ぜて熱波が襲いくるのではないかと思った。けれどもそれは、日嗣の手を離れてもなお穏やかな色と温もりを放っている。
「お祖母様は許してくれた。だからもう、お前が憂えることは何もない。二人で淡島へ帰ろう。そうしたら──もう一度、お前に新しい名を付けさせてくれ。次こそは、数多の神が依るでもない──」
──ただ、日の妻(め)にだけ相応しい神名を。
「……あ……」
それをしかと告げる男の手が離れ、そこで初めて神依は日嗣の言葉の意味を理解する。
みるみる丸く見開かれる目と、白く色を失っていた頬に差す染め入りの果実のごとき紅。そこに少女の淡い恋情を見た日嗣は今更どこか照れ臭そうに、それでも満ちた笑みを浮かべると踵を返し地を蹴った。
「日嗣様──」
男の決意を引き留めようとする間もない。剣(つるぎ)一本で立ち向かうには、あまりに強大過ぎる相手なのに。
日嗣がいなくなった石舞台にはその根元まで泥の触手が迫り、神依は託された黄金色の塊を胸に抱いてじりじりと後ずさる。腰から下に上手く力が入らず、足を引きずって這うように動いた。
逃げ出すことはできない。けれども確かに、泥の蟲もまたここに登れないようだった。
「お祖母様は許してくれた。だからもう、お前が憂えることは何もない。二人で淡島へ帰ろう。そうしたら──もう一度、お前に新しい名を付けさせてくれ。次こそは、数多の神が依るでもない──」
──ただ、日の妻(め)にだけ相応しい神名を。
「……あ……」
それをしかと告げる男の手が離れ、そこで初めて神依は日嗣の言葉の意味を理解する。
みるみる丸く見開かれる目と、白く色を失っていた頬に差す染め入りの果実のごとき紅。そこに少女の淡い恋情を見た日嗣は今更どこか照れ臭そうに、それでも満ちた笑みを浮かべると踵を返し地を蹴った。
「日嗣様──」
男の決意を引き留めようとする間もない。剣(つるぎ)一本で立ち向かうには、あまりに強大過ぎる相手なのに。
日嗣がいなくなった石舞台にはその根元まで泥の触手が迫り、神依は託された黄金色の塊を胸に抱いてじりじりと後ずさる。腰から下に上手く力が入らず、足を引きずって這うように動いた。
逃げ出すことはできない。けれども確かに、泥の蟲もまたここに登れないようだった。

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