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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第22章 天孫降臨
その声は、神依の中にある天秤を傾け、現に引き戻してくれる。あらゆる恐怖と自分とを隔ててくれている恋しい天津男神に、神依はその背を見上げ、見えもしないのに頭を横に振った。
「わかりません──わからないんです。最初は、神様だと思ったんです。火に焼かれて亡くなった、女神様を追ってきた男神様。私を女神様の代わりにしようとして──でも──多分それだけじゃなくて。
あの泥の中では、いろんな人の声が聞こえたんです。私は知らないのに、みんなは私を知っていて、私に何かを求める声。それにあの姿は……どうして。私、前に淡島で聞いたことがあるんです。八俣の大蛇という、巫女を贄に求めた怪物がいたって」
「──」
恐怖を圧し殺すためか、単に風の音に負けないためか──張り上げるように紡がれた言葉の端々に、日嗣の中には改めて問いたいことばかりが浮かんだ。だが今はそれらを押して、ただ一つの確固たる理解を得て剣を握り直す。
「つまりそれは……お前という巫女を娶(めと)る男神が、どこの誰かという話じゃないのか」
「えっ?」
「黄泉に降りれば、同じ妄執に取り憑かれた禍津霊に呑まれるかもしれないとお祖母様に脅された。俺も同じ思いに引き寄せられたか──最後の最後でこんなことになるなら、あの時──」
「わかりません──わからないんです。最初は、神様だと思ったんです。火に焼かれて亡くなった、女神様を追ってきた男神様。私を女神様の代わりにしようとして──でも──多分それだけじゃなくて。
あの泥の中では、いろんな人の声が聞こえたんです。私は知らないのに、みんなは私を知っていて、私に何かを求める声。それにあの姿は……どうして。私、前に淡島で聞いたことがあるんです。八俣の大蛇という、巫女を贄に求めた怪物がいたって」
「──」
恐怖を圧し殺すためか、単に風の音に負けないためか──張り上げるように紡がれた言葉の端々に、日嗣の中には改めて問いたいことばかりが浮かんだ。だが今はそれらを押して、ただ一つの確固たる理解を得て剣を握り直す。
「つまりそれは……お前という巫女を娶(めと)る男神が、どこの誰かという話じゃないのか」
「えっ?」
「黄泉に降りれば、同じ妄執に取り憑かれた禍津霊に呑まれるかもしれないとお祖母様に脅された。俺も同じ思いに引き寄せられたか──最後の最後でこんなことになるなら、あの時──」

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