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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第22章 天孫降臨
先に男神に怖じた自分は、呆気なくその淀に呑まれかけた。だから怖がってはいけない。恐れる必要もない。あれもまた、一つの命の形なのだ。
「っ……く」
だがいくら神依がそれを思っても、今はそれ以上に本能が脅えていた。目の前に在る人智を越えた力と脅威、それが“死”を内包するものであったことを察した神依の肉体は、血や心の臓を通して早くここから逃げろと訴えてくるのだが、足はもう言うことを聞いてくれない。それは人智を越えたものに対する、純然たる畏怖。常若の命を持つ神でさえ見ようとせず、隔て、忘れ、崇めることで克服しようとしてきたものだった。
そしてその恐怖は、今の神依に取っては肉体に及ぶものだけではない。
──あれを前にしたら、自分は消えてしまう。
あの瓦礫の街で得た不可解な感覚が頭の中に広がって、心と体が解離していくのを感じる。それは死ではなく、消失の感覚だった。
慌ててあの時と同じように童の勾玉と禊の紐飾りを握るが、思考は完全に混線している。肉体を殺そうとする恐怖と、精神を殺そうとする別々の恐怖が心ににじり寄ってくる。
「神依──」
そして神依の気配が変わったことに気付いた日嗣は、更に自らの体を盾に神依の前に立ち塞がる。
「すまない、確かに斬ったと思ったんだが。お前を襲っていた……いや、拐おうとしていたあれは何だ」
「日嗣様……」
「っ……く」
だがいくら神依がそれを思っても、今はそれ以上に本能が脅えていた。目の前に在る人智を越えた力と脅威、それが“死”を内包するものであったことを察した神依の肉体は、血や心の臓を通して早くここから逃げろと訴えてくるのだが、足はもう言うことを聞いてくれない。それは人智を越えたものに対する、純然たる畏怖。常若の命を持つ神でさえ見ようとせず、隔て、忘れ、崇めることで克服しようとしてきたものだった。
そしてその恐怖は、今の神依に取っては肉体に及ぶものだけではない。
──あれを前にしたら、自分は消えてしまう。
あの瓦礫の街で得た不可解な感覚が頭の中に広がって、心と体が解離していくのを感じる。それは死ではなく、消失の感覚だった。
慌ててあの時と同じように童の勾玉と禊の紐飾りを握るが、思考は完全に混線している。肉体を殺そうとする恐怖と、精神を殺そうとする別々の恐怖が心ににじり寄ってくる。
「神依──」
そして神依の気配が変わったことに気付いた日嗣は、更に自らの体を盾に神依の前に立ち塞がる。
「すまない、確かに斬ったと思ったんだが。お前を襲っていた……いや、拐おうとしていたあれは何だ」
「日嗣様……」

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