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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第22章 天孫降臨
 先程まではただの影にしか見えなかった。だが、それだけの方がまだましだった。
 わずかな光のもと姿を現した巨大な蛇は──腐っていた。
 頭から首、首から胴、胴から尾と──その皮膚はまるで、泡に包まれた虫の卵のよう。ぐずぐずと赤黒い肉片を撒き散らし、首はそれを塗りたくるように空を這いずり回る。
 風に混じって何かを磨り潰すような嫌な音も聞こえてきて、そこから沸き出てくるものを目にしたとき、神依の肌に突き刺すような悪寒が走った。
 どろどろと撹拌される肉に混ざっていたのは、沢山の禍津霊たち。それは神依が見てきたような蛭や蛇の形のものもあったし、人の手足のように枝分かれしたものもあった。それらが肉にへばりついたりのめり込んだりして、その巨大な生き物の形を造っている。そして確かに神として、雨と風と雷とを纏い、荒ぶる暴神の威を誇っていた。
 (──だめ──怖がったら、だめ)
それは、男神が忌避した女神の器にもよく似ていた。それに気付いてしまった神依は、震える体を自らで抱き必死に恐怖を抑えこむ。
 あれはただの、未成熟な命。未だ廻ることができない悲しい命。
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