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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第22章 天孫降臨
 慟哭によって軋んでいく、男の世界。
 蟻の集団に襲われているように男の体もずぶずぶと、崩れるようにして蟲の形をした穢れに呑まれていく。声すら散り散りに裂けて、人のものではなくなっていく。
 (──私もああなるの?)
直後、一閃の光が横一文字に神依の瞳に走った。蟲の闇を裂くのと同時に瞳まで裂かれた気がして、その錯覚の痛みを癒すように二度眼をきつく閉じれば、
「──手を伸ばせ!!」
残光が浮かぶ瞼の暗闇の中、一際大きな男の声が響いた。
 その瞼に宿る光から聞こえたような、覚えのある声、言葉。
 自ら手を伸ばせたかは分からない。落ちていく反動で浮いただけだったかもしれないが、それでもその腕を目一杯に引かれ、天と地に向かおうとする正反対の力が大きな波となって神依の体の中を不快に震わせた。
 けれどそれも束の間、すぐに何か温かく力強いものに抱(いだ)かれて、神依は自身の肉体が地の理(ことわり)から離れて重力を失い、空に浮かび上がるのを感じた。
 まるで空を漂う換羽(かんう)の羽のように、風に遊ばれる紗の薄衣(うすぎぬ)のように……その中で、神依は確かに懐かしい音を聞いた。
 音ならぬ音。耳から入り、心の底を浄めてそわつかせる。清(さや)かな、玉響(たまゆら)の音。
 (ああ──)
それを悟ったとき、神依は迷わず腕を伸ばした。
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