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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第22章 天孫降臨
【2】
間際、ぎゅっとつむった瞼の中で世界が回る。
突然水に突き落とされたような、瞬間的で激しい浮遊感の中へと放り出された神依は、何が起きたのか分からないままばっと目を開いた。
視界に入ったのは、常夜の空とぼたぼたと宙を舞う蟲。男の手から離れ地に落ちていく自分に反し、次々と空へ上っていく。目に映るそれらは時の流れを遅くしたようにゆっくりとしたものだったが、自身にまとわりついていた異形が力無く滑り落ちていくのが確かに肌にも感じられた。
その向こうで男が呻き、また何かに気が付いたように背後に振り返る。男は誰かと言い争うように何事かを口にしていたが、声は先程の箱の龍のように頭の中を駆け抜けて、しっかりとは聞き取れない。
空を舞う細長い闇と闇の隙間を縫い、振り向いた男と目が合う。苦悶に満ちた顔をして、自分ではない女の名を呼んでいる。叫んでいる。不思議とその唇の動きだけは理解できた。
ミヨリ。ミヨリ、と。ただひたすら、一心に……一心に。
(……)
それは襲われていたはずの神依でさえ眉を下げてしまうような痛々しい声で、男の周りから沸き出る蟲達すらも、その苦痛を男に八つ当たりするようにのたうち回り、暴れていた。
間際、ぎゅっとつむった瞼の中で世界が回る。
突然水に突き落とされたような、瞬間的で激しい浮遊感の中へと放り出された神依は、何が起きたのか分からないままばっと目を開いた。
視界に入ったのは、常夜の空とぼたぼたと宙を舞う蟲。男の手から離れ地に落ちていく自分に反し、次々と空へ上っていく。目に映るそれらは時の流れを遅くしたようにゆっくりとしたものだったが、自身にまとわりついていた異形が力無く滑り落ちていくのが確かに肌にも感じられた。
その向こうで男が呻き、また何かに気が付いたように背後に振り返る。男は誰かと言い争うように何事かを口にしていたが、声は先程の箱の龍のように頭の中を駆け抜けて、しっかりとは聞き取れない。
空を舞う細長い闇と闇の隙間を縫い、振り向いた男と目が合う。苦悶に満ちた顔をして、自分ではない女の名を呼んでいる。叫んでいる。不思議とその唇の動きだけは理解できた。
ミヨリ。ミヨリ、と。ただひたすら、一心に……一心に。
(……)
それは襲われていたはずの神依でさえ眉を下げてしまうような痛々しい声で、男の周りから沸き出る蟲達すらも、その苦痛を男に八つ当たりするようにのたうち回り、暴れていた。

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