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こじらせてません
第2章 馴致
彼へ初めて見せた胸肌へ、濃厚で熱い粘液が飛んできた。その濃度と温度が、自分のボディに対する、彼が下した評価の高さを物語っていた。

勢いも、である。首筋まで飛沫が散った。
更に驚いたことに……体に浴びただけで、自分も達してしまった。

アキラは撒いてしまったことを頻りに謝ったが、ミサは軽く首を振り、深いキスを与えた。

(すごかったな……)

アキラとつきあってから、性悦が鮮やかすぎる。

したがって思い出しただけで、「美しい歩き方」に支障をきたすほど……スカートの中が潤んできた。

外からわかるほどスキニーを染ませてしまったなんて、自分の濡らしぶりが心配になる。

だが調べてみると、分泌の量は当人の淫欲の強さを表すわけではないことがわかった。むしろ、情愛の強さが強く影響するらしい。

そう知れただけで、また、濡れた。

だからといって、人が行き交う街中で潤んでしまうことに、ミサは羞恥を催さないわけではなかった。

いったん立ち止まって落ち着くことにする。
この時間を利用して、スマホで男性用下着を探す。

アキラに似合いそうなものを見つけた。
通販で購入することもできるが、やっぱり神殿の広さが気になる。

何より、今日手に入れて、次に会うときに渡したい。というか、身につけさせたい。

今日も来れないようだが、明日は来るかもしれない。再度の不意打ちも考えられる。

この街は便利だ。有名ブランドならば、必ず店を出している。

だがそのブランドの店舗は銀座の中心ではなく、有楽町駅ちかくのビルに入っていた。

少し遠いものの、潤いは幾分凪いだので歩いて行くことにした。

アキラが履いている下着は、黒かグレーが多い。紫とはいかなくとも、与えるならば別の色のほうがいいように思える。

『何色、すき?』

メッセージを送った。
即既読にはならない。

昨日と違って、ミサには余裕があったから、口元から音符を出しながら美しく歩いた。

カカッ――
口元から出ていた旋律を、自らの靴音が乱した。

「……」
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