この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
いじっぱりなシークレットムーン
第12章 Fighting Moon

***
衣里が休むことになった。
厳密に言えば、昨日の夜から彼女はいない。
――ちょっと休むだけだってば。ほら、私有給使ってないし。
衣里は有給を、自分のために今まで使おうとしたことはないのだ。
今まで何回かは、あたしと旅行に行ったり、結城を交えてキャンプに行ったりと有給をとったことはあるけれど、衣里は基本、会社が大好き人間だ。
さらには結城に営業成績を勝つためにと、休まず働き続ける奴だ。
……競う相手が社長になったから、やる気をなくしたの?
具合悪いの?
なんで理由を言わずに休暇をとることを、結城は許したの?
しかも今、皆で朱羽を助けようと団結している時に。
衣里は元々、自ら進んで輪の中に入ろうとするタイプではなく、クールな孤高の美女だ。
そんな彼女を輪を大切にするあたしが、半ば強引に引きずり込んだから、結城と三人、同期の結束は固くなった。
今まで、彼女にそう接したのは、男も女もいなかったらしい。
……月代会長を除けば。
あたし達は秘密を隠したままでも、困った時には手を差し伸べ合い、遊ぶ時は思い切り遊んで、喜怒哀楽を共にしていた。
あんなに美女なのに女女しておらず、男性のようにさっぱりとサバサバした彼女だから、結城も、性別に左右されない観察眼を重宝して困った時には聞いていたフシがある。
男だらけの営業で、女だてらに成績を上げていた衣里。
そんな衣里こそ、彼女が愛する月代会長とシークレットムーンの危機に憂えていたはずで、結城が株主に可愛がられる社長になったからといって、完全に安心出来る状況ではないことは、とっくに見抜いていたはずだ。
朱羽の見合いは明日なのに、衣里は戻ってくるつもりはあるのだろうか。

