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いじっぱりなシークレットムーン
第12章 Fighting Moon

「こんなに愛し続けている陽菜の相手は俺だと、隠さないで堂々と、あなたを愛していると、あなたから愛されていると、言えることが出来たから……」
朱羽の独白……。
「認められるのが、嬉しくてたまらない。俺の十年は、意味があったんだから。ようやく、結城さんに当然のように寄り添っていたあなたの後ろ姿を、幻に出来る……」
「朱羽……」
「こんな時間が、続けばいいのに。俺の恋人はあなただと、誰もが知って誰もが手出しできなくなればいいのに……」
朱羽が立ち向かう最初は、あさってだ。
朱羽は不安を感じている。
朱羽の酒気の匂いと、朱羽の匂いが混ざり、あたしはなんだか切なくなってしまった。
朱羽の酔いはきっと、こうした弱さを皆の前から隠すためだったのだと気づいた時、あたしは朱羽の心も抱いてあげたいと思った。
「朱羽。あさって……見合いを壊したら、朱羽の家に泊まってもいい?」
「……うん」
「あたし達は続くよ。終わらないよ。頑張ろう? 皆も協力してくれるんだから」
「……そうだね」
本当は今すぐにでも朱羽と抱き合いたいけれど、それで終わってしまいそうな気がするから、未来の約束にする。
……この時病室で、衣里が明日から休暇を取ることを、結城に願い出ていたことを知らずに、どこか刹那的に思えるこうした抱擁が、幻にならないようにと祈ることで精一杯だった。

