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第13章 Final Moon

　
　
「そしてカバだけじゃねぇな、結城も前もって動いてジジイから本音を聞き出していた。結城が声をかけたのが故意的にしろ、それでもジジイにあそこまで浸透出来た結城の人柄は、確かにジジイの俺達にしていることとの矛盾した本音を引き出し、そして衣里もだ。あいつ、お前のために真下に戻って、この結婚話を引き留めてくれていたこと、忘れるな。それは衣里にしたら、どんなに苦痛なことだったのか」

「はい」

「そして一同に並んで、社員全員がお前を離したくないと叫んで頭を下げたこと。残っている奴全員が来たことを」

「はい」

「社員だけじゃねぇ。月代さんまで、あんな姿でも来てくれたんだ。ひと言も、会場に来るなんて言ってなかったんだぞ、月代さん。それでも、たかがいち社員のために頭を下げに来た。それを決してお前も、俺も忘れてはならねぇ」

「はい」

「シークレットムーンだけじゃねぇぞ。名取川さんまで巻き込んだ。彼女の意志とはいえ、カバは彼女に守られ本家に来れた。名取川さんに、心の傷をも晒させたことを決して忘れるな」

「はい」


「それと……向島もな。お前が本社に乗り込んだ後に、向島とどんな話をしていたかは知らねぇが、お前が脅したから奴はあんな手紙を書いたわけではねぇと俺は思う」

「俺も思います。俺がしたのは、忍月の見合い話に心配しているのならそう言えばいいのに、延々と関係ない話をしてきたことにキレたことです。しかも渉さんと会話をしたいのに、俺を使おうとしている魂胆が丸わかりだったから」

――素直じゃなくて格好つけだから、三上さんに逃げられるんでしょう。自分のせいで逃げられても尚、ぐだぐだ想い続けて。女々しい！　ひとに八つ当たりする前に、どうしてプライドを捨ててでも誠意をもって彼女に接しようとしなかったんですか。どうして傍に居ることが当然とおかしな理屈を捏ねるのではなく、傍にいて下さいと言えなかったんですか！　それならただの子供の駄々です！

「はは……。そんなこと言ったのか」

「はい。ちょっとイライラしていたのもあったんだけど」

「あいつはどんな感じだった？」