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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon

「それは……」
朱羽の顔が緩み、それを自覚したのか顔を手で覆った。
「ちょっと待ってて。思い出しただけで俺の顔が変になるから……」
しばし待つと、朱羽は頬を手でぽんぽんと叩きながら言う。
「お嫁さんになってくれる……って」
俺は笑って朱羽の頭をぐしゃぐしゃにした。
「よかったじゃないか、朱羽!!」
「あはははは、髪の毛がおかしくなる」
「髪より喜べよ」
「もう喜んでますって」
俺は朱羽の首に腕を巻き付けそのまま、くるくると朱羽を回した。
「渉さん、目が回るって!」
「じゃあカバは俺の義妹か」
沙紀の義妹でもある。
同い年だけれど、沙紀妹欲しがっていたから喜ぶなあ。
「本番で拒否されなければ、ですけど……」
「そんな気がするのか?」
気弱に呟いた朱羽に、驚いて俺は尋ねた。
「予感というか……、陽菜が俺に疲れなければいいなと。それじゃなくても陽菜に無理させてしまっているし。それと陽菜を迎えられる環境をどれだけ早く整えることが出来るのか。普通の、それこそ結城さんなら、陽菜にそんな苦労を強いない」
「カバはお前が思った以上に、お前に惚れてるぞ? お前のために、ジジイとババア相手に啖呵切ったんだ。湯飲みぶつけられて怪我をしても、二度目の対峙ですら、カバはお前のために頭を下げて、ジジイの心を揺らしたんだ。沙紀から聞いただろ。お前のために、カバ以外、誰がそんなことをするよ。しかも沙紀が言うには、カバは自分の過去を自ら告白したというじゃねぇか」
「……っ」
「隠したいものまでさらして、それでも朱羽が欲しいとカバは食い下がった。天下の忍月財閥の、あの強面の当主にカバは立ち向かったんだ。お前にただの同情とか軽い恋愛をしているだけなら、既にびびって逃げてるさ。お前とずっと一緒に生きたいと強く願ったから、カバはそこまでやっている。結婚という意味ではなかったらしいが、だったらそんな見返りなしにカバは動いたということだ。愛されているじゃねぇか」
朱羽はまた顔を赤らめた。

