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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon

~Wataru Side~
目の前で落ち着かねぇ朱羽がいる。
うろうろ、おろおろ、屋敷内でドーンとかガシャーンとか音が鳴る度に、慌てて部屋から飛び出る。
もう何度目だろう。
またカバに突き放されたのか、憂い顔で戻ってくる。
「朱羽、お前落ち着けって」
「落ち着けないよ! 俺の陽菜は、沙紀さんのように腕っぷしが強くないんだし。あの可愛い顔に傷でもついたら。傷つかなくても俺が貰うけど」
「……お前、さらっと言うけどあの後ちゃんとプロポーズしたのか?」
すると朱羽の顔が一気にぽっと赤くなる。
「そ、その……まだプレだけど」
「プレってなんだよ? お前どうせなにがあっても、カバと結婚するつもりなんだろ?」
「ん……」
またぽっと赤くなる朱羽。
「なにが"ん"だよ、朱羽。こんな可愛い反応して、お前、俺を悶え殺す気なのか? 本気に25歳か?」
「25歳だって。可愛いはやめてよ、俺は大人の男なんだから」
「……はいはい。お前、カバに可愛いと言われたことはねぇのか?」
すると朱羽は考え込み、瞳が斜め上でぴたりと止まる。
……言われたことあるんだな。
本当にこいつは、カバと再会してから、感情豊かになった。
俺ですら、朱羽から感情を引き出すのに、何年もかかったのによ。
朱羽が柔らかい表情で、嬉しいという感情を体現出来るようになったのは、カバのおがだろう。カバが朱羽を悦ばせているんだ。
「可愛いはもういい。お前の結婚したい意思は昔から変わってねぇのに、なんでプレなんて面倒なことをしてるんだよ」
「今は、陽菜に負担をかけている中で、結婚して欲しいなんて俺が脳天気に言える状況ではないのはわかっている。だから意思表示だけをしあったというか」
「ほう? で、カバの意思表示はどうだったんだよ」
俺はにやにやして弟を、折り曲げた肘で突いた。

