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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
 


 ***


 あたしも、沙紀さんのように、忍月の裏の部分を見てみたいと思った。

 きっとそれは、朱羽や専務ら忍月の者は見れないものであり、あたしや沙紀さんら、庶民だけが見ることが出来るもの。使用人と等身大のあたし達だけが。

 使用人達があって、忍月の本家。

 その中枢にいる美幸夫人を構成する一部でもある。

 メイド達から話を聞きたいと思ったのは、忍月の住人が見えない美幸夫人の部分を知れるかもしれないと思ったからだった。

 そのためには、上から目線ではいけないと思った。

 話を聞くなら、あたしも相手と同じ位置に立たねばならない。

――いいか、その格好で屋敷から出るなよ。あなたもあの男三人を見ただろう? 女だとわかって、ぎらぎらした目をしていた。だから危険だ。

――陽菜ちゃん、私がついているから……え? 使用人同士、たとえ暴力沙汰になってもとめるな? う……ん、わかった。だけどヘルプ欲しい時は言ってね。

――スマホを持って行け。俺と朱羽は取り上げられちまってるが、沙紀は持っている。それで俺は、沙紀からのメールを腕時計で取る。

――あ、俺が渉さんの誕生日に送ったものだね? 愛する沙紀さんのメールをどこに居てもすぐ見れるようにって。

――そうだ。これで沙紀からの愛の言葉は、会議中でも見れる……ってなにを言わすんだよ、朱羽!


 美幸夫人の部屋にはトイレやシャワー室があるらしく、夕飯メイドを呼ぶかどうかはわからないけれど、とりあえずその時にあたしが動けるようにしたくて、メイド達に頼み込む。

「皆さんの仕事を教えて下さい。よろしくお願いします!」


 だが即席のメイド姿と、朱羽に肩を抱かれて入ってきて、さらには朱羽の部屋に堂々と居れることは、他のメイド達から大ひんしゅくを買っていた。

「あ~ら、お嬢様に仕事が出来るのかしら」

「メイドの仕事は、金持ちの道楽で出来るような簡単なものじゃないんだよ! どいて!」

「なに、朱羽さまが飽きて使用人に格下げ? そうじゃないと使用人の格好をさせないでしょう。いい気味」

「うわ、なに。もうここの主人になるつもりなの?」

「悪口を言うと告げ口されちゃうよ? ほら、無視して仕事!」
 
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