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蕩けるようなキスをして
第2章 櫻葉陸
肩に掛けた鞄から財布を取り出し、小銭を投入口に入れる。
商品ボタンを押そうとし、
ピッ。
なんの前触れもなく背後から突如伸びた指が、正に彼女が買おうとしていた商品を選んだ。
ガタン。
取り出し口に落ちた、音。
心臓がどきどきし、固まったままの彼女は、すぐには反応出来ない。
彼女が一向に購入したそれを手にしないのを受け、後ろにいた彼が歩み寄り、少々屈み、自販の取り出し口からペットボトルを掴んだ。
そして、彼女に向かい、
「はい、おねーさん」
昨日とまるきり同じ、人を少々小馬鹿にしたような、からかうような-何れにしても腹の立つ事にはなんら変わりない笑みで、お茶を差し出した。
さっさとペットボトルを奪い取り、この場からいなくなりたいのに、またしても、彼女はなかなか手を出せない。
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