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蕩けるようなキスをして
第44章 ファースト・キス
「分かればいーんだよ」
そのいつもと変わらない笑顔に、華夜子の心は救われ、軽くなる。
言いようのない幸せに包まれ、心地良い静寂の中ふたり、足を進めれば、程なく彼女自身の家の前まで到着した。
「ここ、私の家」
陸の手を引っ張り、華夜子は知らせる。
右手側を見上げれば、二階建ての一軒家には、居間らしき一階の部屋に灯りが点いていた。
確か母親とふたり暮らしだと言っていたような-ぼんやりとそんな事を思い出しつつ、とりあえず家の中に誰かがいる事実に安堵し、陸は息を吐(つ)く。
彼女を無事家まで送り届けた事で、ようやく肩の荷が下り、繋いだ手を離す。
じゃあ、また明日-踵を返そうとし、彼女が首筋へと両手を伸ばしてきた。
突然の事だったので、触れないように、触れられないように-そうしてきたのも一瞬、忘れ。
条件反射のように、陸は少し屈み、華夜子の腕が届くようにしてやる。
そして、自らも、彼女のその細い身体を抱き寄せようと手を伸ばしかけ。
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