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蕩けるようなキスをして
第44章 ファースト・キス
「自分の事で、精一杯のくせに。自分の事だけで、その胸は張り裂けそうなくせに。俺の事まで、無理に抱え込むなよ。俺は、大丈夫。お前が思ってる程、俺は辛くも、苦しくもない」
-だから、自分の事だけを考えてろ。
いつしか向けられていた、陸の深く、優しい眼差しに。
華夜子は押し寄せる感情を、我慢出来なくなってくる。
「知ってるだろ?俺は単純なんだよ。俺は、華夜とこうしているだけで、毎日楽しい。華夜がただ側にいるだけで、それでいい。言ったろ?ずっと、側にいろって。いろよ。ずっと、いろ。…もしも、俺の側から離れような事があったなら、その時は俺は泣く」
-ぜってー泣いてやる。
それが困るなら、明日も明後日もずっと、俺の側にいろ-陸の吐き捨てた台詞に、華夜子は泣きたい気持ちだったのに、笑いが込み上げてきてしまった。
「陸に泣かれたら、確かに困る。どういう風に泣くのかも想像つかないし、どういう風に慰めればいいのかもさっぱり分からない。泣かせる訳にはいかないね」
-だから、明日も、明後日も、ずっと、隣りにいないと。
華夜子の囁きに、陸は満足そうに大きく頷く。
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