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第44章 ファースト・キス

「…だからっ。そーいうの止めろって」
－何度も、言ってるじゃねーか。
何度言っても分からない彼女に、腹が立つ。
何度言い聞かせても自分を気遣う彼女に、苛々して仕方がない。
俺をどうこう思い悩んでいる場合かと。
俺より自分だろと、その細い身体を揺さぶりたくなる。
「俺の事を考えるのは俺だ。お前にいちいち、どうこう思われたくなんかねーんだよ」
ここが外で。
今は夜の時間帯だという事も一時忘れ、陸はお構いなしに捲し立てる。
「俺は。俺は自分の意思で、お前を待ってるんだよ。好きでやってるんだよ。いいも悪いもねーんだよ。俺の何にも困ってないと言うのなら、放っとけよ」
怯えたような華夜子の表情に、陸の胸がちくりと、痛む。
「俺の事なんかどーでもいいから。お前はお前の事だけ考えてりゃいーんだよ」
繋いだ手に、痛いくらいの力を籠める。