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蕩けるようなキスをして
第6章 好きな女
私に、なんの恨みでもあって。
私は、あなたなんて。
私は、あなたなんか。
私に、もう、構わないで。
この細い彼女のどこにそんな力が-思う位に。
深く食い込んだ彼女の爪が、とうに皮膚を裂いている-いちいち確認なんてしていないから、正確には分からないけれど。
けれど。
ずっと、そうされていると、痛みも麻痺されてくる。
ずっと、そうされていても、永遠に耐えられそうに思えてくる。
眉を寄せたそれで、彼女を伺う。
もう十分泣いているのに、哀しみを更に上塗りするかのような表情で、こちらを見てくる。
痛いのは自分じゃないのに、まるで血を流しているのは自分であるかのような、痛苦に満ちた、それ。
一番傷付いているのは、彼女-その事実に突き当たる。
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