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蕩けるようなキスをして
第42章 もう一秒
その優しさに、涙が零れそう。
自分で、彼をそんな風にしているのに。
彼を、どうにかしてあげたい-思うなら。
思っているに決まってる。
苦しめたい訳じゃない。
「陸、あのね-」
華夜子が言葉を紡ごうとすると、ただでさえすぐ側にあった陸の顔が、更に近くなった。
何?-思うより早く、自らの額に、彼の額が押し付けられた。
心臓が、緊張で激しく、動き出す。
静かな室内に、互いの呼吸だけが、やけに大きく聞こえる。
嗅ぎ慣れた、互いの匂いが、鼻腔をくすぐり、昂ぶりを煽る。
「…今日も、すげーいい匂いだな、華夜」
彼女の艶やかな髪の香りに酔う、彼の囁き。
華夜子にしてみれば、そんなの陸の吐息こそが温かく、また、良い匂いだと思うのだけれど。
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