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蕩けるようなキスをして
第42章 もう一秒
僅かに開いた薄い唇まで辿っていった時。
視線を感じ取ったのか、不意にスマホから目を離し、こちら側に顔を向けられる。
見事に目が合ってしまい、慌てて逸らす。
テキストやノートを、急いで片付け始める。
心臓は-爆発しそうだった。
「…何?」
微妙に機嫌の悪さを含んだそれで、呟かれる。
「な、なんでもない…っ」
明らかになんでもありますと言っている体(てい)で、華夜子は鞄に乱雑に、勉強道具をしまってゆく。
彼女のわざとらし過ぎる、その様子に。
今度は完全に機嫌を損ねた声音で、陸は問う。
「…なんか、すげー感じ悪いんだけど」
「ごめんなさいっ。ほんと、なんでもないの、ほんとにっ」
掬った横の髪を耳に掛け-でも、俯いたままは変わらずに。
誤魔化すように、華夜子は大声を張り上げる。
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