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蕩けるようなキスをして
第42章 もう一秒
ノートの上を踊っていたシャープペンの動きが、止まった。
ようやく一区切りつき、テーブルに広げていたテキストを閉じつつ、顔を上げる。
目線の先。
壁際に寄ったベッドに、仰向けに寝転び、スマートフォンを一心に操作している、彼の姿。
思わず暫し、じっと見入ってしまう。
柔らかで緩やかな栗色の髪。
その落栗色の髪の毛に、いつもは半分程は隠れているピアスが、今は寝ているせいか、左耳にはっきりと確認出来る。
どうやら今日も、お気に入りのクロムハーツのようだった。
いつ、どんな時でも、決して乱れぬ、その綺麗な横顔。
長い、睫。
通った、鼻筋。
細い、顎。
女の自分でさえ、見惚れてしまう。
けれど。
意外にもしっかりと出ている喉仏は、間違いなく男性のそれで。
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