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蕩けるようなキスをして
第38章 告白
こうして抱き締める事も当たり前となり。
唇以外への口付けは拒絶する事もなく。
寧ろ、悦んでいるように映るのに。
大人しく、その身を預けているようにさえ見えるのに。
あくまでも、そこへのキスは、拒まれる。
身体は良くても、唇への接吻はだめ-まるで、そう、言われているようで。
それがまた、一層、心を傷付けられる。
逆の方が、遥かにいい。
どうしてかと憤ってもいたけれど。
彼女の話を聞いて、その理由が分かった気がする。
彼女は、まだ、その誰かを完全に忘れてはいない。
彼女は、まだ、その誰かとの思い出をなくしたくない。
自分は、まだ、ふたりの間に入り込む隙はない。
忘れているつもりでも、きっと、その瞬間に、脳裏に甦るのだろう。
昨日の突然の涙も、きっと、その誰かをふと思い出し-…。
思い出してしまう限り、彼女と口付けは交わせない。
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