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蕩けるようなキスをして
第5章 卵焼き
「どっちかと言うと多分、嫌われてるだろうから。俺といて、まさか笑ってくれるなんて思ってなかった。…だから、油断してた。なのにいきなり笑うなんて、反則だろ。すげー馬鹿みたいに、どきどきしたじゃねーか」
陸は言葉とは裏腹の照れたような笑みを一瞬見せ、次いで、彼女から顔を逸らしてしまった。
まさか彼がそんな表情をするとは露知らず、見せられたこちらとしても、恥ずかしさに頬が熱を持ってしまう。
「…べ、別に、いつ笑おうが私の勝手でしょ。いちいちあなたの許可なんてとらないしっ?…さっきから、心にもない事でいちいち褒めまくらないで。なんにも出ないんだからっ」
どもりつつ、華夜子はなんとか答える。
太陽も暑い、顔も熱い。
早く涼しい建物の中に入って、鎮めよう-鞄に荷物を全て押し込み、今度こそベンチから腰を上げる。
華夜子の立ち去る気配に、陸は声をかけた。
「公開処刑だなんて、嘘だよ」
彼女の足が止まる。
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