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蕩けるようなキスをして
第36章 待ち伏せ
付け足された一言に、陸は一瞬青ざめたが、すぐに小さく頷いた。
たちまち乃愛はご機嫌となり、華夜子の手を離し、陸へ向けて背中を押してやった。
「泣かすんじゃないわよ、櫻葉陸」
「…泣かさねーよ」
ほんの僅かの言い淀みを経て、陸は呟いた。
そして、俯いたままの彼女を改めて見詰め、穏やかに囁く。
「行こ、華夜?」
返事は貰えなかったが、繋いだ手を突っぱねられる事もなかった。
それを陸は了承の意味に捉え、華夜子を大学の建物から外へ連れ出した。
正門へ向かう途中。
華夜子は、勇気を振り絞り、何も訊いてこない陸の横顔を見上げた。
「…昨日は、ごめんなさい」
「…」
「…あんな、いきなり泣き出したかと思えば、陸を置いたまま、そのまま走って帰ってしまって」
「…」
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