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蕩けるようなキスをして
第5章 卵焼き
自分が、どうかしちゃったわけじゃない。
絶対に。
「おねーさん?」
またしても耳朶に程近い場所から囁かれ、スピードは増すばかり。
やばい-慌てて、華夜子は言い放った。
最高速度に達したその時が怖かった。
自分がどうなってしまうのか恐ろしかった。
あなたがいるのに。
私はあなたでいいのに。
恐怖のあまり、だから、華夜子は、声に出した。
自分を見失ってしまうくらいなら、喋ってしまうくらい、なんでもない。
実際、なんでもない事なんだから。
もしかしたら、恥は、かいてしまうかもしれないけれど。
でもそれくらい、なんでもない。
「…お弁当があったなって」
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