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蕩けるようなキスをして
第34章 彼の過去
陸の両眼は、華夜子を真っ直ぐに捕らえ、逸らす事を許可しない。
「簡単だろ。なら、今すぐにでも、なればいい-」
耳朶を、頬を、撫でられ、促される。
肌が粟立ち始める。
脳裏で、危険を知らせる赤い光がしきりに点滅してる。
背は、冷水を浴びたかのように、冷たい何かが伝う。
「陸…」
許して欲しくて、彼の名を呟けば、温かな吐息が、耳にかかる。
ひとこと、言えばいいだけだ-幼子を諭すかのように、囁かれる。
「何を…?」
訊いてはだめなのに。
訊いたからには、従わない訳にはいかなくなってくるのに。
それでも彼の瞳に誘い込まれ、自分の意思とは裏腹に、訊いてしまう。
俺の女になってよ、華夜-陸は、彼女に向かって微笑んだ。
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