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第29章 嫉妬

「…どこに、行こうか。華夜、考えてきてくれた？」
胸に巣食い始めた不安を隠し、陸は努めて明るく、華夜子に尋ねる。
「…うん」
一言。
返事をするのが、やっとだった。
「教えて？」
訊き返す陸もまた、短く発するのが、精一杯だった。
「…」
答えに詰まる。
考えていなかった訳ではない。
沢山過ぎるくらい、考えてた。
でも、言えない。
言葉がどうしても、喉を超えてくれない。
無言が続き。
忽（たちま）ち、ふたりの間に、重々しい空気が広がる。